最初に目指すはアンヘルモ

プエルト・モン(Puerto Montt)は漁業で有名だ、と聞いたら魚を食べずにこの土地をスキップできる人はいないだろう。

観光客がこの土地を目指すモチベーションの一つに、チリ屈指の漁港で美味しい魚をたらふく食べたいと、いうものもあるだろう。特に日本人であれば、格安ウニを温かいご飯にたっぷり乗せて、この上なく贅沢なウニ丼を食べたいと思うに違いない。そう、ここはサーモンの養殖でも有名だが、ウニでもまた有名なのである。

 

サンチアゴからのバスがターミナルに到着し、宿に荷物を置くと、真っ先にメルカド・アンヘルモ(Mercado Angelmó)を目指した。ここは小さな漁港アンヘルモにある魚市場で、プエルトモンから西に約2キロ程行ったところにある。

 

ちょうどお昼の時間ということもあり、市場は活気があった。とびきり大きい市場ということではないが、とにかく所狭しと魚や貝が並んでおり、見ているだけでも面白い。店先で売るセビッチェはその種類もまた、豊富である。全制覇したいところだが、これまた分量も多く、1つだけでも腹がいっぱいになってしまいそうなほどだ。ちなみに私はエッジを効かせて、ホヤのセビッチェを選び、さらに追加でウニを乗せてもらうこととした。

ふと外見目をやると観光客がざわついている。なんだろう、と野次馬心丸出しで向かってみると、丸々と太ったアザラシが手をパタパタさせながら日向ぼっこをしているらしかった。野生ということもあろうが、観光客には目をくれず、とにかく締まりなく、ダラダラと日を過ごしているようだった。


ぼんやりと彼らに目をやりながら、先ほど買ったセビッチェに口をつけた。「おいしい。」ここのホヤは日本のそれと比べると小ぶりだが、味も濃すぎないのがいい。レモンでしっかりと和えてあり、爽快感があるから余計にそう感じるのかもしれない。そして、ウニもまた良い味を出している。白いホカホカご飯が欲しくなったが、ここでは手に入りそうにないのが残念なところである。

 

そうこうしているうちに先ほどまで平穏だった海が突如としてざわめき出した。頭上では、数え切れないほどの鳥が旋回し、アザラシも唸りを上げながら想像以上に機敏な動きを見せている。どうやら、魚店の人が投げ入れた魚の残骸を、皆で取り合っているようだ。大きな肉片をゲットしたアザラシは勝ち誇ったような顔をしながら、ガブガブとそれに食らいつく。鳥は余り物をせしめようと、上空から常に目を光らせている。

 

 

ホヤを食べて一旦は静かになっていた私の胃も、彼らの豪快な食べっぷりに刺激されたのだろうか。また新たなる食物を求めて、主張を開始した。

この市場の2階にはレストランが連なっている。客引きに声をかけたれながら、店先やメニューを見る。眺めも良く、目当てだった地元料理クラント(Curanto)を提供してくれるエル・ピングイノ(Cocineria El Pingüino)という店に入った。ここからは海が良く見える。

クラントはチロエ島の郷土料理である。肉、海鮮、じゃがいも、さらにはパンと、提供できる栄養素は全てお皿に載せました的な料理である。その大きさといったら半端なく、げんこつの高さよりもゆうに高かった。

 

見ただけ胸いっぱいにだったが、その磯の香りと、付け合せで出たセビッチェ、されにはピスコサワーに誘われるが如く、ムール貝に手を伸ばす。それにしてもムール貝にしてもハマグリにしても、その巨大さといったら半端ない。大味すぎることもなく、その旨味は口いっぱいに広がった。燻製肉も食べ応えがある。鼻の奥をスモーク独特の良い匂いが通り抜ける。鶏肉も柔らかい。磯味で若干口がしつこくなった時に、口の中に放り入れるチョリソーもパンチが効き、面白い。

 

そのボリュームさから、完食までには若干胃袋の中に詰め込むように食べるプロセスが必要になってしまったが、兎にも角にも食べ応えとともに、陸や海の垣根を超えたフュージョンには恐れ入った。全くもって新しい。ちなみに、魚の旨味がギュギュッと濃縮された付け合わせのスープも格別で、お腹いっぱいにもかかわらず、ついついお代わりをしてしまうこととなる。

 

さすがにもう食べられない。ここで一度寝したいところではあるが、そうもいかない。さっきまで大騒ぎしていたアザラシはどうやら満腹になったようで、暖かく乾いた場所に陣を取り、ごろっと体を横にしている。

 

食べ過ぎという罪悪感を払拭するために歩いて帰ることとした。
プエルト・モンまでは40分。途中は土産物店を見ながら、デザートのジュースを飲みながら、楽しく変えることができた。それにしても、空は晴天で、風もうまい具合に吹いてくれ、絶好の散歩日和だったな。

 

クラントの作り方に興味のある方はこちらをどうぞ。

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