プエルト・リコ:ハリケーン・マリア後のビエケス島と今後の取り組み

ビエケス島はプエルトリコ本土から東に13キロ行ったところにある。その名は先住民であるタイノ族の言葉「bieke(小さい島)」に由来する。夜光虫で有名なモスキート・ベイ(Mosquito Bay)や手付かずの自然が残っているものの、クレブラ島ほど観光地がコンパクトにまとまっていないこと、極端に有名なビーチがないことから、観光客の数は比較的少ないように見えた。その分、ゆっくりとした時を過ごすことができたように思う。

ここは米国海軍の軍事練習地だったことでも有名である。当時軍は土地の3/4を占有し、爆撃演習の名の下、ナパーム弾、枯れ葉剤、劣化ウラン弾までも使っていたという。島民による粘り強い反基地運動の末、2003年に海軍は本拠点を放棄したものの、これらの軍事演習が島に与えた影響は甚大だった。人体における高い癌発生率、重金属やその他の有害物質の蓄積、そして大規模な環境汚染と生態系に対する壊滅的な破壊をもたらした。破壊された自然や、土壌汚染は数年で取り戻されるものでもなく、また残念ながら汚染物質など放置されたままだったりと、引き続き住民に対する負担は大きく残っているようだ。

 

海軍が去ると、今度はこの島が持つエコ・ツーリズムへのポテンシャルに興味が移っていくこととなる。肥沃な自然、多様な生態系、息をのむほどの美しさを奏でる海岸は多くの観光客を引きつけ、世界TOP25のビーチとしてTripAdvisorにも選ばれた。この土地の大部分はビエケス 国立野生動物保護区(Vieques National Wildlife Refuge)として指定され、海岸、沿岸礁湖、マングローブを伴う湿地帯、高地森林帯など幅広く保護されている。

島が長年抱える汚染への対処とともに、観光資源である自然にダメージを極力与えることなく産業を開発していくこと、これが今後のビエケスに求められていくことになるだろう。そしてこの事例こそが今後より良い社会を形成していくための手本となるかもしれないのである。

 

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